フィクション小説(特にファンタジー小説)が大好きな藤ミヤチです。
好きな小説を読んでいるときは、本気で寝食を忘れてしまいます。
かろうじて寝食を忘れなかったとしても、本当に食事とトイレ以外は微動だにせず本を読み続けている日もあるくらい。
私の価値観は、かなりこれまで触れてきたファンタジー小説(と一部SF小説)の影響を受けていることがしばしば。
そこで、この記事では私の価値観に多大なる影響を与えてくれた小説をまとめました。
一番影響を受けたのは小野不由美の「十二国記」シリーズ

間違いなく私に一番影響を与えてくれたのは「十二国記」シリーズです。
とりわけ「月の影 影の海」。
言ってしまえばよくある異世界召喚系のファンタジー小説なのですが、主人公の陽子が経験する物事の凄惨さに目を奪われます。
右も左もわからない場所で、味方の一人もいない状態。
ただ海に投げ出されてたどり着いた場所で、必死に生きていく話です。
陽子は、宛もなくさまよう中で、人の裏切りに何度も遭遇しました。
その中で「人を信じることとは何か?」を問いつづけてくれます。
苦しみぬいた1年弱の後に、彼女は想定すらしていなかった運命と出会うことになるのですが、その過程で「自分は卑怯者でいたくない」という答えを見つけます。
「人が信じてくれるから信じ返す」のではない。
いつか信じた人に裏切られるかもしれないけれど、それは裏切った人が卑怯者であるだけ。
自分は見返りのためではなく「その人を信じて」、卑怯者にならないでいよう。
苦渋をなめた過程の後にたどり着いた彼女なりの答えに、ハッとさせられたのを覚えています。
この他にも示唆に富む話が多く、何度も何度も読みました。
「十二国記」は、私の価値観の根幹を成しているとも思います。
世界の捉え方に影響を与えてくれた奈須きのこの「空の境界」

私が好きな小説のなかでも、ちょっと異色な『空の境界』。
中学生のときに図書館でたまたま見かけて、「『空(そら)の境界?』なんか面白そうなファンタジー小説だな」と思って手にとったのを覚えています。
本当は「空(そら)」ではなくて『空(から)の境界』なんですが。
この作品は7部にわかれていて、その中でも第三章の「痛覚残留」が衝撃でした。
少しだけネタバレをしてしまうと、後天的無痛症の少女が出てくる話なのですが、痛覚がないだけで世界の捉え方が180度変わってしまうのだな、ということを知りました。
もともと目が見えない人はどんなふうに世界が見えているのか知りたい、と思っていたんですよね。
それは、人間の感覚はかなり視覚に左右されるものだと思っていたから。
でも、痛覚がなければ、一般的に抱いている「人間とはこうである」という感覚が崩壊することもあるのだと知りました。
その瞬間から、今まで見ていた世界がかなり曖昧なものであると気付かされたんですよね。
どこかの感覚器官がうまく働かないだけで、おそらく「世界」の捉え方が100%変わるだろうし、そもそも「人間」という共通概念ですら共有できない可能性があると思いました。
この「感覚」は、もしかしたら『空の境界』のメインテーマではないかもしれませんが、その後の私にかなり影響をあたえた作品と言えますね。
自分の世界が広がった上橋菜穂子の「守り人」シリーズ

『精霊の守り人』からはじまる「守り人」シリーズは、30歳の短槍使いバルサが主人公です。
作品全体の世界観として、いま大方の人が見えている世界と重なるように別世界がある、というのがベースになっています。
別世界(ナユグ / ナユーグル)には、人間ではない別の生き物たちが、別のルールに従って生きています。
別の秩序に沿って生きている者たちなので、時には人間たちを混乱させ、時には生命の危険に晒すこともありました。
でも、作品全体として、別世界(ナユグ / ナユーグル)を一方的に否定することはないんですよね。
彼らには彼らなりの、私たちには私たちなりの秩序があって、ただお互いに生命を謳歌しようとしているだけ、と言うんです。
この「否定しあわずに、穏やかに共存しようとするあり方」自体が、すごく心に響きました。
積極的な肯定をしなくても受け入れることができる、と知ったきっかけでしたね。
当たり前のことに気づかせてくれた田中芳樹の「創竜伝」

物語の中だと、よく誰かを人質にとった悪者が主人公たちに「お前らが動けば人質が死ぬ」みたいな理不尽な要求をつきつけてくるシーンってよくありますよね。
人質を助けたいのに、助けるための行動自体が人質を害することになるというパラドックス。
そこで葛藤する話も好きですが、そもそも「その葛藤っておかしくない?」という新しい見方を教えてくれた物語です。
『創竜伝』は、平たく言うと諸事情によって政治的権力・暴力に翻弄される4兄弟の物語なのですが、彼らが理不尽な状況に立たされることが数多くありました。
先程の「人質を殺されたくなかったら動くな」と言われるケースですね。
ただし、そこで4兄弟は遠慮なく動くんです。
「え?」って普通は思うんですよ。
4兄弟にとって、人質はすごく大切な人です。
でも、悪者が「人質が死んでもいいのか!もし死んだらお前たちのせいだぞ!」と怒鳴ってもお構いなし。
4兄弟は「人質が死んだら、殺したお前の責任であって、俺たちの責任ではない」と言い放つんです。
物語のセオリーからしたら異質な意見なんですけど、私は妙に腑に落ちて「そういう考え方もあるのか!」と気付かされました。
価値観を広げてくれたいい小説ですね。
むかし読んだ小説はいつまで経っても色あせない
ここまで私の価値観を変えてくれた小説の中から、特に印象に残っている4作品(シリーズ)を紹介しました。
実は他にも紹介したかったノンフィクション作品はたくさんあります。
- 新堂冬樹『忘れ雪』
- 小野不由美『屍鬼』
- 上橋菜穂子『狐笛の彼方』
- 梨木香歩『西の魔女が死んだ』
- 本多孝好『ALONE TOGETHER』
- 景山民夫『遠い海から来たCOO』
- 佐島ユウヤ『春陽』
- 恩田陸『遠野物語』
- 宗田理『ぼくらの七日間戦争』
などなど。
これまで何度も読んできた作品ばかりです。
何度読んでも色あせることはなく、読む度に新しい発見があって楽しいですね。
どれも変わらず、私の一部になっていると思っています。
また機会があれば、順次紹介していきますね!